目が見えない、視力が弱い、活字を読むのが苦手
こんな人たちはどんな本が読めるの?
誰もが「自分事」として考えるための取材レポート

著者:宮田和樹 馬場千枝 萬谷ひとみ

出版社名 ボイジャー
出版年月 2024年5月

電子版:1,540円(税込)
ISBN978-4-86689-342-6
印刷版:2,420円(税込)
頁数 176P 四六判
ISBN978-4-86689-343-3

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内容紹介

2023年7月19日、第169回芥川賞が市川沙央『ハンチバック』に決定。
市川氏が受賞コメントで言及したことで、一気に「読書バリアフリー」の認知が広まりました。
「読書バリアフリー」の下、注目のアクセシブルブックの種類や電子書籍の可能性を詳しく解説。

目次

はじめに

第1章 アクセシブルブックって何だろう?

 見られないから、聞く——音訳図書、オーディオブック
 見られないから、触る──点字の本
 読めないから、読める形に──マルチメディアDAISY
 読みやすく、分かりやすい形に──LLブック
 さまざまな触感を楽しむ──布の絵本
 見えにくいから大きくする──拡大写本、大活字本

第2章 読書を心地よく楽しむための社会背景とその変遷

 「読書バリアフリー法」とは何か
 読書バリアフリー法制定の背景
 日本での障害者サービスの変遷
 現在の課題と、解決への提言
 「本の飢餓」の解消に向けた取り組み
 マルチメディアDAISYの作り方
 マルチメディアDAISYの課題

第3章 アクセシブルブックを増やすためには?

 アクセシブルブックに向けた出版社の取り組み
 着実に増えている電子書籍
 聴覚障害者にとってのマンガとは
 テキストデータ提供への模索
 業界団体からのアプローチ
 未来のアクセシブルブック

第4章 デジタルなアクセシブルブックの規格と技術

 DAISYとEPUB
 EPUBの策定に深くかかわったDAISYコンソーシアム
 ナビゲーションとTTS
 DAISYやEPUBの社会的なメリットは大きい
 デジタル出版の現場からの取り組み
 実践可能なガイドラインの必要性
 電子書籍図書館サービスへの期待
 読者に届けるために販売サイトでできること
 デジタルなアクセシブルブックの可能性

第5章 公共図書館のサービスでアクセシブルブックを体験してみよう

 図書館での障害者サービスとは何か?
 数字でみる―公共図書館の障害者サービスの課題
 音声DAISYの作り方と課題
 国立国会図書館における「読書バリアフリー法」への取り組み
 取り組み事例の紹介
 アクセシブルブック利用のはじめのいっぽ

おわりに

団体・企業紹介(登場順)



本書のポイント
(1)「読書バリアフリー」をコンパクトに解説
・芥川賞作家・市川沙央さんのインタビューで注目の「読書バリアフリー」をコンパクトに解説
・出版社などの企業・団体の一般研修の参考書として活用可能

(2)障害者、障害者の支援団体、出版社などを取材
・日本点字図書館
・りんごプロジェクト
・ふきのとう文庫
・特定非営利活動法人エファジャパン
・日本DAISYコンソーシアム
・集英社インターナショナル
・新宿区立図書館
ほか

(3)アクセシブルブックのアクションガイド
・アクセシブルブックの作り方がわかる

さわれる絵本や大活字本、LLブックなど、アクセシビリティに配慮した本には一般に知られていないものが少なくない

ピンが上下に動いて点字を表示する点字ディスプレイ。メモや読書のほか、PCにつないでメールや検索にも使える
(参考)実際の使用イメージがわかるYouTube動画

宮田 和樹(みやた かずき)

愛知県生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。研究者(デジタルカルチャー)。青山学院大学総合文化政策学部非常勤講師・デジタルストーリーテリングラボ代表教員・つくまなラボフェロー。メタバースやVRを活用した社会課題の解決に学生たちと取り組む他、デジタルメディアのアクセシビリティの動向にも注目。2023年から渋谷区立図書館音訳ボランティア協力員として講習会や勉強会に参加している。著作に「ザトウクジラが観察できるワールド,Whale Research VR制作プロジェクトの中間報告 」、『青山総合文化政策学』第14巻 第1号など。

馬場 千枝(ばば ちえ)

東京都生まれ。東京都立大学人文学部史学科卒。1991年よりフリーライターとして仕事を始める。長期投資・CSR関連、子育て、健康、歴史、生き方、料理、芸能、インタビューなどの雑誌記事・書籍の執筆及び制作協力多数。全盲で日本ブラインドサッカー協会初代理事の釜本美佐子さんの著書の制作に協力し、高齢になってから視覚を失った人の生活のあり方、読書の困難さを知り、アクセシブルブックの重要性を再認識する中で、本書の取材執筆を行っている。

萬谷 ひとみ(よろずや ひとみ)

新潟県生まれ。玉川大学文学部教育学科卒。1990年特別区職員として板橋区立清水図書館に配属される。その後、行政課等を経て、1999年区間交流で新宿区へ異動。新宿区立中央図書館等に勤務し、途中行政課等を経て2023年3月まで同館副館長として勤務。同年7月に「Reading LiaisonPartner」(リーディング・リエゾン・パートナー:読書とあなたをつなぐお手伝い)を立ち上げ、現在は代読事業等を行っている。

推薦コメント

アクセシブルブックのいまを知り、これからを考える必読の一冊!
2024年は、読書バリアフリーの推進にとって重要な年になりそうです。まず、「読書バリアフリー法」の制定・施行から5年を迎えました。また、改正「障害者差別解消法」が施行されて、出版社や私立図書館などの民間事業者にも障害者への「合理的な配慮」の提供が義務づけられました。さらに、前年に第169回芥川賞を受賞した市川沙央さんの問題提起を受けて、日本文藝家協会、日本推理作家協会、日本ペンクラブの文芸三団体が「読書バリアフリーに関する三団体共同声明」を発表しました。
そんな2024年に、読書バリアフリーに欠かせないアクセシブルブックのいまを知り、これからを考える絶好の書『アクセシブルブック はじめのいっぽ』が誕生しました。著者の宮田和樹、馬場千枝、萬谷ひとみの三氏による各方面への精力的な取材がアクセシブルブックをめぐる現状をリアルに描き出し、取り組むべき課題を浮き彫りにしています。出版や図書館の関係者にとって必読の書であること、間違いなしです。
そして何よりも、読書を愛する人すべてに手にとってほしい1冊です。高齢化率30%の超高齢社会を迎えた日本。人生100年時代にあって、一生涯のなかで誰しもが読みづらさを経験する可能性があります。そんなとき、あなただったら、どうしますか? 読書をあきらめますか? その答えも、本書のなかにあります。
さあ、読書バリアフリーへのいっぽを『アクセシブルブック はじめのいっぽ』からふみだしましょう。

 野口武悟(専修大学文学部教授)



『アクセシブルブック はじめのいっぽ』を推薦します
視覚障害や識字障害、あるいは紙の本が扱えない重度の身体障害の人にも本を読む権利がある。この書籍へのアクセス権を守るための『読書バリアフリー法』はすでに制定されているのだが、現実には多くの問題が残されている。この本は、そのアクセス権を守るための困難な道のりを、歴史をたどり、技術的な課題を指摘し、未来への展望を探ったもので、 書籍出版にたずさわる人はもとより、本を愛する人にはぜひ読んでもらいたい。ぼくは著作権関係の仕事をしていて、視覚障害者とのつきあいが長い。いまでは障害者もパソコンやスマホを使えるようになった。ワープロやメールに用いられるテキスト文書は合成音声の読み上げソフトが音訳してくれる。ところがいま発売されている電子書籍の多くは、ガードがかかっていて読み上げることができない。そこをどのように乗り越えていくか。何よりもこの本そのものが、読み上げソフトに対応したアクセシブルなものになっている。そこに問題の解決法が明確に示されている。

 三田誠広(作家/日本文藝家協会副理事長/日本点字図書館理事)



全出版人が知っておくべき基本の基
出版の第一目的は知の伝承である。ヒトが出現し獲得した知識を伝承するための方法は長い間、口承だった。ユーラシア大陸で文字や紙が発明され、文字による伝承がうまれても、それを読める人は限られていた。500年程前、グーテンベルクが完成させた印刷技術によって、知は誰にでも容易に継承できるようになった、と言われる。
そうだろうか?
ここで忘れられていた人々が居た。さまざまな障害で活字が読めなかったり、ページを捲れなかったりする人たちだ。その人々に知ることの嬉しさを提供するのも、出版人の仕事ではないだろうか。近年のデジタルの進歩により、これまで活字の本の蚊帳の外に置かれた人々にも容易に本の楽しさを提供できるようになった。弊社では2007年から、書籍のテキストデータを提供しているが、現在の電子本はその必要がない。本は紙で読むもの、それが当たり前だった。基本的にその考えは変わらない。しかし、それを利用できない人に利用できるようにするのも出版人の仕事だろう。
本書には、実にいろんな形で障害を持つ人々に知を提供し、本の飢餓を解消する方法の実例が満載だ。決して難しいことではない。全出版人が知っておくべき基本の基がここにある。

 菊地泰博(株式会社現代書館 代表取締役社長)



司書資格や広くライブラリアンを目指す皆さんに読んでいただきたい1冊です。
 きっと、本好きな方が本書を読めば「こんなアクセシブルブックはどうだろう」などと、本の良さを引き出しつつアクセシビリティなアイディアをたくさん思い浮かべるのではありませんか?
 本書の1章と2章で解説されているように「読書」は決して万人にできることではありません。しかし、現代社会は「読書」ができることが前提能力となっており、義務教育課程においても、本を読む(本を読める)ことが基礎能力となっております。具体的には、教育基本法第34条(49条にも準用)にて「教科用図書を使用しなければならない」と定められており(ただし、同2項で教科用図書以外の教材も認められてはおります)、小中学校では、原則「図書=紙媒体の本」により教育が行われることになっております。しかし、本書2章で解説されている「読書バリアフリー法」に伴い「教科書バリアフリー法」(障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律)も整えられ、2024年の改正(7月施行)では、対象を障がいのある児童生徒から外国人児童生徒等にまで広げるに至っております。したがって、いよいよ小中学校においても、本書で解説されている「アクセシブルブック」で授業を行える環境が整ったと言えます。ですので、教師を目指す方や、学校図書館の司書教諭を目指す方など、これから教育現場に携わりたいと考える方々にも、ぜひ本書をご一読いただきたいと思います。

 本書は、1章にて視覚障がいに限らずディスレクシア(難読症)など、様々な事情や特性で「読書」が困難な方々へ取材を通じ、その現状を詳細に解説しています。読み始めの1章より「読書」好きな方々には大きな衝撃を受けることと思います。続く2章では「読書バリアフリー法」を境とする社会変遷や課題と、本のアクセシブル化について知ることができます。3章4章にて「アクセシブルブック」化に向けた出版業界の取り組みと、電子書籍を進化させ「アクセシブルブック」の規格化を進めようとする各種技術的な解説がなされており、ここまで読み進めれば、きっと本好き、読書好きな方なら、お気に入りの本を「アクセシブルブック」にしてみたいと考えるのではありませんか。
 なお特に、本が好きすぎて司書や司書教諭を目指される方は、1~4章を理解した後、5章で解説される「音声DAISY」の制作工程、および各図書館や公共施設における取り組み事例を熟読され、本文で紹介された各施設に実際に行ってみることをお勧めします。


  谷田貝雅典(共立女子大学 文芸学部/共立女子大学大学院 文芸学研究科)
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2010年以降、スマートフォン、インターネットの普及が急激に進み、ジャンルを問わずデジタル出版はすっかり社会に溶け込みました。目が見えない、体が動かせないといった障がいを持つ方たちの読書の手助けにもなろうとしています。デジタル一滴シリーズは、教育現場や読書バリアフリーなども含め、数多くの実例をとおしてデジタル出版のさらなる可能性を探ります。デジタルの一雫、Each Drop of Digitalで出版は多様性を取り戻せるのか? 関係者の哲学や活動を紹介するシリーズです。
※「一滴」は、南米の民話に登場するクリキンディという名のハチドリが、嘴に水を含み、一滴の水で山火事を消そうとしていることをモチーフにしています。

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