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作品説明
こうした新たな生殖医療は、インドにおいてどのような歴史的、社会的背景のもと広がっているのだろうか。
これに関しては、これまで富める先進国と貧しい途上国という二分法の中で生み出される新植民地主義的な搾取の構造や、生命や身体の利用という人間の尊厳の侵犯という倫理的問題が指摘されてきた。これらの指摘は、代理出産を理解するうえで言うまでもなく最も重要で、かつ、基本的な出発点である。だが、そればかりでは、「良いか、悪いか」という二元論的な袋小路に陥る可能性がある。
本書では、代理出産を現代インドにおいて生起する社会現象としてとらえ、その広がりを文化論として考察することを目指す。インドにおける代理出産は、出産の商品化をめぐってグローバル化とローカルな社会が接合するなかで、様々なアクターや要因が複雑に関わってなされる実践である。それらを解きほぐすために、本書では主に代理出産をめぐってどのような政策や言説が繰り広げられてきたのかという社会空間のレベルと、実際の代理出産で何が起こっているのかというフィールドのレベルから、インドの代理出産の実像に迫ることにしたい。(本文より抜粋)
【目次】
はじめに
一 インド社会と生殖医療技術
1 多様性の国、インド
2 「試験管ベビー」から代理出産へ
3 メディカル・ツーリズムと社会問題
4 ART規制法案の特徴
二 代理出産を支える要因
1 経済格差と身体部品の売買
2 スティグマとしての不妊
3 生殖医療による身体介入の歴史
4 ヴェーダ科学と神話
三 代理出産のフィールド
1 代理出産のプロセス
2 代理母になる女性たち
3 代理出産を正当化する論理
4 アクター間の関係性
おわりに
注
参考文献
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