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文書史料が語る近世末期タイ ラタナコーシン朝前期の行政文書と政治
考古学一般アユタヤの滅亡と、それを受け継いだラタナコーシン朝の成立、そののちは無変化、あるいは衰退。王朝の交替をのぞけば、その停滞的なイメージは同時代の日本や中国、朝鮮のそれと似ているのかもしれない。そして蓄積された問題を一掃して国家を一新したのが名君五世王であったのだ、と。しかしである。実は、このような歴史像は五世王などの改革当事者たちが描いたところが少なくない。彼らがそれ以前を否定的に描いたのは当然であり、我々はその歴史像を全面的に信用することはできない。また、このような歴史像では、何の下地もないにも
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ベトナム「おかげさま」留学記 「異文化」暮らしのフィールドノート
文化/民俗ベトナムを理解しているのか、いないのか。日常に埋没しながらもそう自問するうち、徐々に、「これがベトナム」といいきることはできなくても、私が出会った風景や人々のことなら何か語れるのではないか、ときに納得のいかない理不尽さに対面することもあるけれど、そうした経験を含めてベトナムにいることをまるごと味わい、楽しみたい、と考えるようになったのです。そして、それは、どんなに「文化」の内を揺れ動こうとも、多くの「おかげ」――人々から直接的、間接的に与えられる恩恵や刺激、あるいは叱責や無視であっても、そうした
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法廷の異文化と司法通訳 中国籍被告人を裁く時
政治本書ではまず、司法通訳の現状や、これまでに議論されてきた問題について俯瞰し、まず「司法通訳」に関する各者の考えとその対応策を明らかにする。それらを踏まえたうえで、「法文化」「コミュニケーション」という言葉をキーワードとして、別視点から「司法通訳」を見つめなおすと、そこでは司法関係者にさえはっきりと認識されていない課題が浮き彫りとなってくる。すなわち、それぞれの「思い」はなぜすれ違うのか、そのすれ違いはどこから生まれるのか、という異文化との接触によって生まれる問題である。この問題は、司法界やその関
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ミャンマー農村とマイクロファイナンス 貧困層によりそう金融プロジェクト
社会問題バングラデシュのグラミン銀行(創設者、ムハンマド・ユヌス教授)が始めたこのしくみは、三〇年以上の時を経ていまや世界中に広まり、ミャンマーを含む各国で一定の成功を収めている。従来は誰からもお金を貸してもらえなかった貧しい人々にお金を貸しても、きちんと返してもらうことができるのには、何か特別な理由があるのだろうか。また、ミャンマーという世界でもかなり貧しい国の貧しい村において、貸し出されるお金の金額や件数が頭打ちになるどころか、年々それらの数が増えていっているのは、なぜだろうか。これらの問いに答える
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ミャンマーの女性修行者ティーラシン 出家と在家のはざまを生きる人々
文化人類学こう書くと、上座仏教社会の女性は一見男性出家者のような修行ができないように見えるが、比丘尼復興運動が起こるまでにも、女性の出家行為は全くなかった訳ではない。むしろ古くから家を出て剃髪し宗教的生活を営むティーラシンのような女性は、ミャンマー以外の上座仏教社会にも広くみられ、スリランカではダサシルマーター、タイではメーチーと呼ばれている。つまり、上座仏教社会の女性は、比丘尼としての正式な出家への道は絶たれているが、出家行為そのものが禁じられているわけではないのである。本書が取り上げるのは、比丘尼とい
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ミャンマーの土着ムスリム 仏教徒社会に生きるマイノリティの歴史と現在
社会問題本書では、仏教徒が多数を占めるミャンマー社会において、民族的にも宗教的にもマイノリティであるムスリム住民が、社会に自らをどのように位置づけようとしているのかを明らかにしていく。ここで扱うムスリム住民は、ミャンマー国民でありながら、ミャンマー社会の一員として暮らす上で様々な困難に直面している。しかし、彼らは、イスラームを信仰するバマー(ビルマ族)、すなわち「バマー・ムスリム(あるいはミャンマー・ムスリム)」と称し、土着民族、あるいは国民としての意識を強く持って暮らすことを積極的に選択している。彼ら
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もっとアジアを学ぼう 研究留学という生き方
文化/民俗もっとアジアを学ぼう。学ぶためには留学に出かけよう。「留学」と一口に言っても、この語の意味するところは様々である。夏休みや春休みを使っての語学留学もあれば、正規の学生として海外の学校に学び、幾年もかけて学位を得るという留学もある。この本が皆さんにお勧めしようとするのは、そのどちらでもない。大学院生やポストドクターなどが自分で計画を立て、その計画を実現するために渡航先へ赴き、現地の大学や研究所などに、訪問研究者や外国人研究生の資格でお世話になる。そうして、一年や二年という期間を区切ってフィールドワ
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モンゴルの仮面舞儀礼チャム 伝統文化の継承と創造の現場から
文化/民俗本書では、「モンゴル・チベット世界」に存在するチベット仏教寺院の修会・チャムについて、その中でも民主化以降モンゴルにおいて復元復興が進められている〈フレーツァム〉を取り上げ、師承関係に基づく文化の伝播、それによって形成された文化圏における伝統文化の継承について考えていきたい。しかしながら、チャムは密教の秘儀であるため、堂内で秘密裏に執り行われる修会に関しては調査の範囲を超えている。それゆえ、秘儀の部分を除き、堂外で行われるチャムのうちで知り得た部分を記録と聞き取り調査によってつなぎ合わせていくこ
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わたしの体におこること なんでもガールズトーク!
社会心理女の子たちへのエンパワーメントの本! 30代の著者が、小学校高学年ぐらいから抱えてきたもやもやした性に関する話題を全ページイラストで紹介。思春期の子どもたちの体や心に関する困りごとについて、「気になるよね」「わたしもこんなことに悩んだよ」と、まるで隣りでおしゃべりをするようにつづっていきます。 ネガティブな感情もかくすことなく紹介した本書は「自分の体について知ることは、人生をどうやって主体的に生きていくかということと密接に結びついている」と感じられる作品でもあります。 リアルに、具体的に、