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ブルーノの問題
外国文学故郷喪失者は言語の中でのみ生きることができるたとえどこにいようが故郷には決していないのだから 原書が刊行されてから二十数年が経過し、サラエヴォ包囲自体は過去の出来事になったかもしれないが、むろん優れた小説はこの程度の時間で古びるものではないし、そもそもユーゴスラヴィアの惨事と消滅そのものは過去の話であっても、同じような事態が日々世界で生じていることは言を俟(ま)たない。(柴田元幸)ヘモンがナボコフとのあいだに感じる親近感は語彙という面からくるものではなく、故郷を喪失した作家が共通して抱える「埋め
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フルトラッキング・プリンセサイザ
文学VRにAI、最新のテクノロジーを題材としながら、読後には人肌のような温みが残る。読者はきっと、作中人物たちに対して抱く自分の優しさに驚くだろう。それは視点やナラティブがつくり出す仮想現実的な効果であり、それこそが作者が小説に持ち込んだテクノロジーなのだ。(滝口悠生)情報と身体、科学と物語がますます複雑に交差し、いま「感覚の大気」が変動している。行方がわからないその変動を、この小説家は、現時点で生け捕りにしているかのようだ。(千葉雅也) 映像や3DCGを扱う制作プロダクションに勤めるうつヰの一日は
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ブンバップ
詩/短歌/俳句みんなして写真のなかで吸う紙のたばこ 爆発前のSupreme第3回笹井宏之賞永井祐賞受賞!これ、新感覚です。友達の日記を覗き見してるようでクセになります。━━━SUSHIBOYS(ラッパー)短歌で生きた音を響かせるには、文体を一から自分でつかみ直すしかない。そう感じさせる一冊である。━━━永井祐(歌人)【収録歌より】業務用コーンフレーク買って食べ切れなかったの良かったなってファイナンスのテーマソングを子どもたちが歌ってる bpmがすこし高い汚れたしそろそろで洗うコンバース六月はすぐ乾くから夏肉ま
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米国散歩
紀行米国への高校留学ほか、長く米国に住み、米国人と接した著者による「異文化」たる米国と米国人素描。長く暮らしたNYや旅をした全米の都市や大自然から感じたことを徒然に記述。エッセイ風の青春小説も掲載。
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ペイフォワード ニューヨークから心をつなぐ物語
文学名もなきたったひとりの想いが、世の中を変えることだってある!悲惨な道へ歩み続けている現代社会にストップをかけるために、私たちにできることは何なのか?を提示する現代人必読の小説。【2.5次元的読書のすすめ!】本書は、SNSとの立体的な読書法をお勧めしています。まずは、冒頭のニューヨーク州立大学ニューパルツ校のHP画像や近辺の街並みなどをストリートビューを使い確認しながら読み進めてください…。いつしか貴方は、この物語の登場人物の一人になっているはずです…!?【目次】─Ⅰ─1 ニューパルツ2 真夜中の
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ボイジャーに伝えて
文学世界の自然音を録音しながら音の向こうの世界を見出そうとする公平と、レコーディングスタジオで働く恭子。セント・ギガ(実在したラジオ局)に感銘を受けて自然音を採取し録音作品を作り始めた公平は、見えない音の向こう側にある世界を見出そうと日本を旅し、沖縄にたどり着く。その旅路を見守る恭子。2人は、お互いの存在を通してそれぞれ自分自身のあり方について真摯に模索し続けていく。世界中を巡りながら紀行文を書いてきた駒沢氏の抱えていたテーマや思想が、フィクションという形で展開された作品。
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法王フランシスコの「核なき世界」
エッセイ「声の大きな人の声」を伝える意味は何だろうか。そんな思いを抱きつつ法王訪日に同行した記者はやがて、法王の行動や発言に心が動かされていく。唯一の被爆国である日本でさえ、「核廃絶」に対する諦観や無関心が漂っている。そんななか、ローマ法王フランシスコは長崎と広島を訪れ、核なき世界は「実現できる」と明言し、「使用」のみならず「保有」をも明確に非難した。法王はなぜいま、訪日を強く望み、被爆地に足を運んだのか。その背景と意味は何だったのか。【目次】第一章 訪日にかける意気込み第二章 欧州中心主義からの脱却第