著者特別インタビュー映像公開中!
今年2月に晶文社から刊行された『これからの本の話をしよう』の著者・萩野正昭のインタビュー映像が公開されました。小さなこと、出来ないということ、諦めること、捨てること……新しい時代はそこから始まるとサラッと話しています。
萩野正昭×若林恵「本はどのように拡張されるか?」イベントレポート
本屋B&B(下北沢)で開催 賑わう会場
4月7日、『これからの本の話をしよう』の刊行を記念して、著者の萩野正昭さんと元『WIRED』日本版編集長、現在は黒鳥社を設立し活動している若林恵さんによる特別対談が開催されました。
日曜日の夜にも関わらず観覧席はほぼ満員。客層は男女ともにおよそ20代から60代まで、文字通り老若男女問わず集まった印象でした。デジタル出版の最前線に立ち続ける萩野さんと、様々な分野で「コンテンツ」の可能性を探る若林さんの二人への注目度の高さを垣間見ることが出来ました。
そんな会場で二人が語ったこととは。
個人が発信する時代=クオリティ低下の時代?
一方で若林さんは電子書籍、デジタル出版の登場に危機感を持つのが遅く、iPadが登場したあたりで初めて「俺ら、やばいかもね」と感じたと言います。当時、「1人1メディアの時代」という言葉が注目される中、編集者として制作の大変さを知るが故に「個人が情報を発信できる時代」というのは「クオリティの低い作品で溢れ返る時代」ということなのでは、と疑問を抱いていたとのこと。この疑問には萩野さんも同意。しかし長年この仕事に携わってきて作品のクオリティは徐々に上がってきていると語りました。
そして気が付けば話題は「片岡義男」へ。
電子本と印刷本の関係
若林さんはかつて行った片岡さんへのインタビューで、質問に対する返答があまりにも短くて苦戦したと話すと、片岡さんと直接やり取りすることも多い萩野さんも「茶目っ気のある人」と表現した。そして切り口鋭い片岡さんの発言から勉強になったことも多かったそう。
ボイジャーは「片岡義男 全著作電子化計画」と銘打ち、一人の作家のアーカイブ化を目指して活動を続けてきました。若林さんはアーカイブでの商売が出版の本質だと気付いたそう。歴史ある出版社の強みはアーカイブにあるのではと指摘しました。
会場には電子本と印刷本、どちらを購入することが多いかとアンケートを実施。中には装丁がきれいなものは印刷本、移動中にも読みたいものは電子本を購入する、という人も。
片岡義男『あとがき』や『これからの本の話をしよう』には帯にQRコードが付いており、印刷本を購入すると電子本も無料で読むことができる試みを行ったと話す萩野さん。家にいる時は印刷本を読み、電車の中ではスマホで電子本を読むなど、好みに応じて自由に使ってみてほしいと話した。
本の未来とは
出版ビジネスから紙と電子の関係性、はたまた業界の裏話まで話は多岐に及び、充実した内容に会場は終始盛り上がりました。その様子は映像でも撮影しています。最後には二人のサイン会が行われ、対談は盛況のうちに終了しました。
あの頃は電子書籍元年と言われていた。しかし今は年数を数える人もいません。本当の未来は時間が経てばやってくるものではなく、誰かが切り開かなければなりません。そんな可能性のある人がこの会場にもいた、かもしれません。