無料公開コラム 『白昼の死角』15話 公開中!

『白昼の死角』は、雑誌ニューリーダーに連載されているジャーナリスト北沢栄氏のコラムです。
かつて共同通信経済部記者・ニューヨーク特派員として活躍した北沢氏の鋭い視点により、現代の社会問題をテーマに、人々が目を背けがちな課題を見据え、よりよい社会を実現するために私たちに問いかけます。社会の死角に切り込んだ必読の連載コーナーです。
※本連載は、月刊ニューリーダー2021年11月号(第1話)~2023年1月号(第15話)に掲載された内容です。

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白昼の死角『多発する金融トラブル 融資の資格、違約金は明示されているか』

多発する金融トラブル 融資の資格、違約金は明示されているか

超低金利下で多発した中小企業の金融トラブル。興味深い訴訟の一つが、最高裁で争われている。中小企業が信用金庫に対し貸付契約に際しリスクの説明がなかったとして起こした損害賠償請求訴訟。説明の有無が争点だ。
高金利の長期貸付金を信金側に一括返済し、別の信金に借り換えたところ多額の違約金支払いを強いられる。ところが信金側は貸付契約の際、違約金について何一つ説明しなかった、と原告側は主張。1審、2審とも、信金が勝訴したが、違約金条項の説明を受けた合意確認書など物証はない。
金融トラブル増を背景に、三菱UFJ 銀行などは既に、貸付契約前に違約金条項を取引先に文書で示し、署名と押印を求めている。金融機関の新たな対応変化の流れを最高裁はどう判定するか。


        
公開コラム一覧
  • 自民党総裁選で見過ごされた河野太郎氏の提案

    岸田政権で要職に就いて以来、河野太郎氏は自ら発言を封じているが、じつは1年半前に政府の政策と真っ向から対立する重大提案をしている。原子力政策と年金政策の2つについてだ。2つとも国の基幹政策の転換を促すため、いまなお改革の大がかりな起爆剤として地中に潜む。

  • 経済成長については沈黙 危機感なき政治の危うさ

    2021年10月の衆院選挙―与野党のほとんどは、経済成長に触れなかった。各党とも「分配」重視、長期低迷する日本経済に対する政治の危機感の限りない薄さを示した。成長は重要だ。30年にわたり日本の平均賃金はほとんど横バイ、急伸する韓国にも追い抜かれた。この30年間、中国の名目GDPは37.5倍、世界トップの米国は3.5倍伸びたのに、日本はわずか1.6倍。先端技術でも、半導体、太陽光パネル、液晶、有機EL、リチウムイオン電池で当初、世界の先頭を行ったが、量産競争に敗れた。いまや「分配」の是正と共に「成長」が必要だ。

  • 日本経済の「失われた30年」成長を取り戻す新処方箋(上)

    「失われた30年」からどう脱出するか。まず、失われた30年をもたらした主導役の金融システムに目を向ける。すると、日銀が拠って立つ主流派経済学が間違っていたことに気付く。バブルの過熱を早めに冷やさず、その後の後処理が誤った。デフレスパイラルの悪循環からついに脱け出せないまま、物価高騰したいまでも超緩和政策を続ける。アベノミクス下、2010年代には、先端産業ICT(情報通信技術)の国際競争力が目に見えて落ちてきた。経済学の誤りを正さなければならない。

  • 成長を取り戻すための処方箋(中) 新説「公共貨幣理論」

    日本の誤った経済学の元は、アダム・スミスに遡る。スミスの自由主義経済学から発した市場の自動均衡理論が、資本主義経済の柱となった。が、1929年に世界大恐慌が起こるとたちまち信頼を失った。戦後栄えた金融資本主義も、格差をますます拡大させる制度として国際的な批判にさらされる。お金の仕組み自体がおかしい、との疑念が広がる。お金のカラクリは「信用創造」にある。民間銀行が利息を付けて貸し出す信用創造のカラクリでカネは出回る仕組みだが、そこに問題のタネが潜む。この現行欠陥制度に代わる新しい「公共貨幣理論」を紹介する。

  • 成長を取り戻すための処方箋(下) 新説「公共貨幣理論」をさらに検証する

    銀行の「信用創造」のカラクリによって借金マネーが膨らみ、実体経済を超えて回転し、拡大していく。銀行にとって顧客(企業など)に貸付をすることは、「貸出金」という金銭債権と「預金」という金融債務を同時に発生させることになる。銀行は、貸付により新たな預金を増やしていく「信用創造」で、業容を拡大していく。 このカラクリで金融の行き着いた先が、法定通貨に担保されない度外れの信用供与(貸与)。その結果、バブルと崩壊を引き起こし「失われた10年」を招いた。 この貨幣システムを根本的に変え、マネーをコントロールしなければならない。

  • バーチャルな至福と実生活を損なう脅威 メタバースが生み出す新世界は…(上)

    2022年、熱狂的なブームとなったメタバース。フェイスブックから「メタ」に社名変更したCEOザッカーバーグによると、メタバースはスマートフォンに次ぐ「次世代のITプラットフォーム」。その魅力は「VRの臨場感」だ。 リアルとみなして没入してしまう新世界とは? 現実のリアルな世界は悲しいことが多すぎる。人類は間もなくVRの新世界という選択肢を本当に持てるのか。自分の分身「アバター」を使って入り込む異次元の仮想体感とその仕掛けのナゾを解き明かす。

  • バーチャルな至福と実生活を損なう脅威 メタバースが生み出す新世界は…(中)

    メタバースへの期待が膨らむ理由は、NFTの存在だ。ブロックチェーンのデジタル技術を使うと、アートや音楽、動画、ゲームなどの原作が「唯一ホンモノ」と証明できる。作成者や作製時期、所有権履歴などのオリジナル情報が印され、コピーや偽造が不可能となる。ブロックチェーン上でこのホンモノ・コンテンツを暗号資産(仮想通貨)で取引する。 メタバース世界では、NFTを使って高額の買い物やユニークなアートの取引も暗号資産で行える。大谷翔平選手は米暗号資産交換所と広告の長期契約を結び、契約金を暗号資産で受け取っていた。NFTが普及すれば、従来の経済生活が一変する。

  • バーチャルな至福と実生活を損なう脅威 メタバースが生み出す新世界は…(下)

    メタバースは果たしていい事ずくめなのか。負のインパクトに、まず「広告による操作」がある。世界のデジタル広告は急増中だ。グーグル、メタ、アマゾン3社でデジタル広告費の7割超を握る。メタバースになると、多数の人がアバターを使って現れるので、ネット広告は従来に比べ大きくスケールアップする。 ターゲット広告が主流になり、ユーザーは広告にますます影響されて、個人情報が抜き取られる危険が増す。 悪意を持ったアバターの出現もある。セクハラやいじめが増え、子どもが攻撃されやすい。 が、一番の危険は、メタバースに溺れて実社会に戻れなくなることだ。

  • プーチンの似顔絵

    プーチン・ロシアの戦争は、プーチンが政権を握る限り止まらない。プーチンの独裁権限、妄想的世界観、支配欲とが引き起こした戦争だからだ。 プーチンはヒトラーとスターリンから統治手法を学び、気質と狂信性も受け継いだようだ。プーチン自身は初代ロシア皇帝のピョートル1世を尊敬する人物に挙げる。だが、ピョートルは西洋化改革を進めた人物、欧州嫌いのプーチンとは対照的だ。一番似ているのは、ロシアで尊敬する偉人のトップを占めるスターリンだ。残忍さと人命軽視で際立つ統治性がそっくりだ。 大ロシア主義の世界観も、戦争へと駆り立てる。「ウクライナはロシアの一部」と妄信する。「強いロシアの復活」を目指す限り、プーチンの恐怖政治と侵略は終わらない。

  • 丸投げ、他人事行政にウクライナ避難民の困惑

    日本に逃れてきたウクライナ避難民――。その多くが、日本政府の「受け入れ、形だけ。対応、遅すぎ」に不安を感じている。 避難民対応の主管官庁は入管庁だが、仕事を地方自治体に事実上、丸投げしている。たとえば、日々の連絡や情報の受発信にスマホが欠かせないが、水際の入管時に職員は避難民にスマホを持っているかさえ確認せず、当初はスマホの無料貸し出しもしなかった。結果、避難民は筆者を含む支援グループが作った支援プログラムをスマホで知ることもできない。入管庁は避難民と支援グループをマッチングアプリで結び合わせる基本動作を怠っていたわけだ。 筆者を訪れたウクライナ家族も、ウクライナ料理店に渡したチラシをみて、支援を初めて知った。行政に血が通っていないのだ。

  • 食料安全保障に一筋の光、それはコメだ(上)

    ロシアのウクライナ侵攻と台湾有事の危険を受け、「食料安全保障」問題が急浮上してきた。 ウクライナ産農産物の輸出にブレーキが掛かり、小麦、トウモロコシ、ヒマワリ油の供給不足が大きく影響、食品の値上げラッシュが続く。 食料危機の中、日本はピンチをチャンスに変える道がある。まず、日本がほぼ100%国内調達でき、海外でも評価が高まるコメの活用だ。世界3大穀物の中でコメは唯一、安定した生産増を保つ。 コメの輸出を押し上げる「おにぎり」、グルテンフリーのヘルシーな「米粉」、ホカホカご飯が食べられる「パックご飯」が食料安保のカギを握る。

  • 食料安全保障に一筋の光、それはコメだ(中)

    食料の安全供給確保には、日本農業の再活性化が欠かせない。動きは出てきた。新潟県は東京都と連携して米粉の活用と販売促進に乗り出した。PRキャラクターには「コメパンマン」が登場した。 国内消費量が右肩下がりだったコメにも一大変化が訪れた。世界の健康意識の高まりとグルテンフリー市場の急拡大で米粉用コメの需要が急伸したのだ。 日本産コメの魅力はアジアばかりか欧州でも高まる。日本酒の輸出額は10年前の約50倍に。米粉はドイツで人気が急上昇、日本産米粉のドイツ向け輸出額はコロナ前より2倍以上に増大した。

  • 食料安全保障に一筋の光、コメそして…(下)

    コメ復活の一手は、いとも簡単に食べられる「パックご飯」の普及と輸出だ。東日本大震災で避難民に重宝され見直されて、需要を一気に掘り起こした。 農業生産性と先端農業技術で世界の先端を行くオランダ農業の強みも取り入れる必要がある。オランダは九州並みの国土面積だが、農産物輸出額は世界2位。AIを活用して競争力を強め、トマトの生産性は日本の7~8倍に上る。 もう一つ、食料自給自足政策の中国のスマート農業からも学び取るものが多い。広大な農地の上空をビッグデータを基に数10機のドローンが舞う。 食品ロスの徹底削減、代替肉や培養肉、昆虫食の普及も食料安保に欠かせない。

  • 元統一教会の罪と罰

    安倍元首相の銃撃死の背景にあった統一教会問題。教団の自民党政権への浸透、霊感商法被害が表面化して国民を驚かせた。 政府は教団を解散に追い込もうと、消費者契約法や民法、宗教法人見直しなど3つの方面から切り込む。だが、その特異な問題に十分対処できそうにない。フランスが社会問題化したカルト活動に対し2001年に制定したようなカルト規制法を作る必要があるだろう。ただし「信教の自由」との兼ね合いから、宗教か否かではなく詐欺や脅しなどの「行為」が問われるべき。仏サイエントロジー事件裁判が参考になる。 統一教会のカルト活動は、教祖の「聖本」1冊3000万円など手口の悪質性が際立つ。

  • 多発する金融トラブル 融資の資格、違約金は明示されているか NEW

    超低金利下で多発した中小企業の金融トラブル。興味深い訴訟の一つが、最高裁で争われている。中小企業が信用金庫に対し貸付契約に際しリスクの説明がなかったとして起こした損害賠償請求訴訟。説明の有無が争点だ。 高金利の長期貸付金を信金側に一括返済し、別の信金に借り換えたところ多額の違約金支払いを強いられる。ところが信金側は貸付契約の際、違約金について何一つ説明しなかった、と原告側は主張。1審、2審とも、信金が勝訴したが、違約金条項の説明を受けた合意確認書など物証はない。 金融トラブル増を背景に、三菱UFJ 銀行などは既に、貸付契約前に違約金条項を取引先に文書で示し、署名と押印を求めている。金融機関の新たな対応変化の流れを最高裁はどう判定するか。

著者紹介

北沢栄

現在、事実に基づく小説スタイル「ジャーナル・ノベル」を追求。
神保町近隣の東京・神田須田町生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。共同通信経済部記者・ニューヨーク特派員を経てフリーランスジャーナリスト。2005年4月から08年3月まで東北公益文科大学大学院特任教授(公益学)。行政改革、国家予算などに関し参議院厚生労働委員会、同決算委員会、同予算委員会、衆議院内閣委員会で意見陳述。07年11月から08年3月まで参議院行政監視委員会で客員調査員。10年12月「厚生労働省独立行政法人・公益法人等整理合理化委員会」座長として報告書を取りまとめ。近著に『南極メルトダウン』(産学社、電子版はVoyager)。訳書に『リンカーンの三分間―ゲティズバーグ演説の謎』(ゲリー・ウィルズ著・共同涌信社)。共著に『東日本大震災後の公益をめぐる企業・経営者の責任』(現代公益学会編)など。


その他の著書
  • 神保町と大正デモクラシーの書影880円2021/04/01

    神保町と大正デモクラシー

    北沢栄文学

    神保町で書店を営んでいた曽祖父・谷村真介の大正期の日記を読んで私は驚嘆した。日記には現代史に登場する大人物が次々と現れ、曽祖父と親しく交流していたからだ。その中に、中国から留学していた周恩来、新進気鋭の芥川龍之介、社会活動家の賀川豊彦がいた。この3人の先人との対話で大正デモクラシーの特有の自由で多様な文化が浮かび上がる。

    【目次】
    プロローグ
    1 中国人留学生
    2 宝塚と浅草オペラ
    3 パリ講和会議
    4 文化の町
    5 モガモボ
    6 普選運動
    7 カフェ
    8 民本主義
    9 労働運動
    10 軍隊出動
    11 ぼんやりした不安
    12 大正の黄昏
    エピローグ

  • 南極メルトダウンの書影825円2019/04/01

    南極メルトダウン

    北沢栄文学

    地球温暖化はティピング・ポイント(転換点)を超えた。南極大陸の氷河・氷床が海水温の上昇で融解し、ついに崩壊して世界規模の大津波を引き起こした。暴走する資本主義が地球を破滅に追い込んだのだ。気象予報官の白井清は気象庁を自主退職、独立して温暖化の危機に遮二無二に取り組む。国際石油資本の謀略に巻き込まれながらも異常気象の真因を突き止め、折からの破局を救おうと奔走する。

    【目次】
    Ⅰ 天変地異
    Ⅱ グリーンランド
    Ⅲ 気候大変動
    Ⅳ 南極メルトダウン

  • 小説・非正規 外されたはしごの書影660円2016/09/12

    小説・非正規 外されたはしご

    北沢栄経済/社会小説

    東大卒の非正規労働者、弓田誠は在学時の就活期に事情があって就職を逃し、職を転々として低賃金・使い捨ての実態を知る。弓田はしかし、12年に及ぶ過酷な経験を自分にしかない「体験資産」と考え、格差社会に対応する原動力とする。勤め先の外食チェーン、自動車工場、特殊法人、メガバンクなど、いずれも得難い体験資産となった。30代も半ばとなり、機は熟した。弓田は意を決し、計略を巡らして資金調達にメドをつけ、友人らと新たな事業プロジェクトを立ち上げる。 【目次】 プロローグ I 外食チェーン 1. 感想レポート 2. 虚偽情報 3. ヘイトスピーチ II 自動車工場 1. 商品蒸発 2. 末梢神経 III 年金機構 1. しがらみの園 2. 旧サクセス・ストーリー IV 学校 1. 知的伝道者 2. ブラック自治体 V メガバンク 1. 本郷の紳士 2. 告白 3. 企業経済学 vs. 労働経済学 4. 勝ち組 vs. 負け組 VI 独立 1. 運命 2. 希望 3. 新生活へのシナリオ 4. 法律の落とし穴 5. 創造的立ち上げ 6. 離陸

  • 小説・特定秘密保護法 追われる男の書影880円2015/01/15

    小説・特定秘密保護法 追われる男

    北沢栄経済/社会小説

    特定秘密保護法--この法律は、もう施行されている。秘密法の一撃で見えてきた社会の全体像は、あまりに恐ろしい。それは、誰もが公安に目を付けられたら最後、逮捕され得る社会だ。逮捕1号は、あなたかもしれない。"萎縮の法” の施行後に、いったい何が起こり得るのか。権力の腐敗を追求してきたジャーナリストが抉る特定秘密保護法の真実。官僚支配の強化に警鐘を鳴らす衝撃のシミュレーション・ノベル。

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