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ふしぎ駄菓子屋 銭天堂18
文学駄菓子の商品会議で、企画が出なくなった招き猫たちに、紅子は過去の思い出を語りはじめる。なにかアイデアの参考になるかもしれないからだ。紅子はそのむかし、行商スタイルで、ひとり駄菓子を売っていた。この巻では、エピソードごとに、その時代の紅子の思い出が語られる。・妖刀糖(戦国時代)・舌鼓(江戸時代)・写し柿(江戸時代)・夢あめ(大正時代)・育て手(昭和 高度成長期)・景気ケーキ(昭和 バブル期)最終話は、紅子と墨丸の出会い、銭天堂のお店をかまえるまでを描く。
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イマジナシオン
詩/短歌/俳句言葉で世界が変形する。不思議な日常なのか、リアルな非日常なのか、穏やかな刺激がどこまでも続いてゆく。短歌が魔法だったことを思い出してしまう。─山田航【5首】いずれ夜に還る予約のようである生まれついての痣すみれ色花びらがひとつ車内に落ちていて誰を乗せたの始発のメトロ手のひらの川をなぞれば思い出すきみと溺れたのはこのあたりおふたり様ですかとピースで告げられてピースで返す、世界が好きだ海の日の一万年後は海の日と未来を信じ続けるiPhone【目次】Ⅰ仮想上の観覧車一生分の虹を見ていた転生譚この世の次のⅡ
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エモーショナルきりん大全
詩/短歌/俳句上篠翔の短歌の特徴はスピードである。そして、スピード感とスピードとはちがう。スピード感はスタイルであり、スピードは本質だ。口語のスピードの快感を存分に味わってほしい。─藤原龍一郎【5首】アリス お茶もういいよ アリス 泣かないで 薇ほどけば春が終わるよっこ って何 生きあいっこするわたしたち朝から氷くちうつしてく能あるきりんは首を隠す んなわけねーだろ剝きだして生きていくんだ光の荒野花みたい、それはやさしい揶揄でしたいいよ花ならお墓に似合う【目次】Ⅰ ‐花曜日編‐ ‐夏の魔物編‐ ‐水没都市編
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君が走っていったんだろう
詩/短歌/俳句1000年たっても青春である視界が開ける。いつもの世界が新しくなる。若い世代の生きづらさに寄り添う歌。─千葉聡【5首】目を閉じた人から順に夏になる光の中で君に出会った海だってあなたが言えばそうだろう涙と言えばそうなんだろう雨に会うそのためだけに作られた傘を広げて君を待ってる花にルビをふるように降る雨、雨の名前は誰にも分からないけど「幸せに暮らしましたが死にました。けれど死ぬまで幸せでした」【目次】いつ見ても今が見えない真夏の背骨もし俺がBreathless青の温度天才児たち顔真冬の星座そうだね
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ショート・ショート・ヘアー
詩/短歌/俳句生まれたての感情を奏でるかけがえのない瞬間を軽やかに閉じ込めた歌の数々。日常と非日常と切なさと幸福が、渾然一体となって輝く。─東 直子【5首】旅客機の窓はきらめくそれぞれのパーパス・オブ・ユア・ヴィジットをのせ君の背にロールシャッハが咲いていてそれでも好きと思えたら夏スーパーで出くわすような気まずさと夜の校舎のような嬉しさ日々のバカ 開きっぱなしの踏切でほとぼりが過ぎ去るのを待ってサササドリと母が呼んでる鳥がいてたぶんこれだな、サササと走る【目次】タクトをふるうあいもかわらず恋人上京編ADV
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新装版 キムの十字架 松代大本営地下壕のかげに
文学今、あらためて戦争を考える。長野県で極秘に進められた大本営工事。そこには朝鮮から強制連行されてきた兄弟がいた。過酷な強制労働のなかでたがいの消息を知らぬまま過ごした。終戦により解放され、兄は弟も連行されていたことを知るが…。児童文学者・和田登が丹念な取材や残された記録をもとに、物語へと昇華させた最高傑作。【目次】1 物語のはじまり2 セファンのひろいもの3 ジェハのビンタ4 風のうなる夜5 大雪の日に6 中野少年の死7 解放だ!!8 セファンの文字か?9 空中にまいあがった紙 10 はるかな鐘の
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ねむりたりない
詩/短歌/俳句幻の心臓が鳴りやまない燃えやすくて凍りやすい感情に居場所を与える。今ここに生きるために。未来を確かめるために。─東 直子【5首】母さんの自作だったと後に知るお伽話で燃えていた町くるぶしは小さな果実 夕闇に熟れゆくきみを起こせずにいるあの女も使ったかなぁ出汁巻のうずに差し込む基礎体温計一歩ずつ脱ぎ捨てていくサンダルのごときクリップ海に焦がれて枯れるのも咲くのも花の意志ならばわたしの体はだれの福音【目次】Ⅰ ミナモきみも海鳴り都庁庭のない家糸より細くリビングルームⅡ ツツジユーラシア永い背泳ぎし
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老人ホームで死ぬほどモテたい
詩/短歌/俳句思わぬ場所から矢が飛んでくる自分の魂を守りながら生きていくための短歌は、パンチ力抜群。絶望を嚙みしめたあとの諦念とおおらかさが同居している。 ─東 直子【5首】母は鳥 姉には獅子と羽根がありわたしは刺青(タトゥー)がないという刺青(タトゥー)風呂の水が凍らなくなり猫が啼き東京行きの切符を買った故郷の母と重なりしメスライオン 深夜のナショナル・ジオグラフィック沼津という街でxの値を求めていた頃会っていればなシロナガスクジラのお腹でわたしたち溶けるのを待つみたいに始発【目次】スナックはまゆうエグザ
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月刊 ココア共和国 2022年9月号
詩/短歌/俳句毎月、読者から詩作品を募り、新鮮な抒情や、理論と方法論の実験に満ちた素敵な作品たちをていねいに編んでいきます。その投稿詩は、秋吉久美子賞、いがらしみきお賞、YS賞への応募作とみなされ、3月に受賞者を発表します。今月のゲストは、秋吉久美子、いがらしみきお、北爪満喜、齋藤貢、小林素顔、伊藤テル、能美政通、菅沼きゅうり、森崎葵 の9名。投稿詩傑作集として43名、佳作集には108名の詩人が登場。毎号、投稿詩を中心に編集していく予定です。詩は楽しくて、深いものだと感じてもらえる編集に努めます。【目次】高山
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再婚ものがたり
文学妻に去られて十余年、二人の子を大学まで育て上げた男と異国で夫を亡くした女が出会った。訪れた妻の実家で会った義理の父親は只者ではなかった。明治以降の日本の近代史を背負って生きる現代の怪人とも呼ぶべき異形の人だった。家族は日本と深い関わりを持ったが故に、父親はその歴史から抜け出せずに生きていた。偉大な祖母に育てられた妻も日本ではとっくに失われた道徳と倫理で生きていた。そして世に理解されない父の生き方に翻弄されながらも、父娘の情愛を胸にけなげに寄り添っていた。