ラフカディオ・ハーンの耳、語る女たち 声のざわめき
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作品説明
ギリシャ、アイルランド、米国、マルチニークをめぐり歩き、1890年に、40歳を前にしてラフカディオ・ハーンは来日した。
盲目の女性芸能民の三味線、行商人の下駄のひびき、大黒舞[だいこくまい]の踊りと歌、道ゆく笛の音……。富国強兵に突き進む近代化のなかで「雑音」として切り捨てられた口承文芸の調べ、民衆の暮らしの音が、ざわめきとなってハーンの耳を圧倒する。
シンシナーティやマルチニークでの濃厚な声もまた、潮騒のようにハーンに押し寄せる。「海の声は…たくさんの声がかもしだすざわめき」なのである。
このざわめきを聴き取るために、ハーンが小泉セツに怪談を語らせるさい、彼女にこう求めた――「ただあなたの話、あなたの言葉、あなたの考でなければ、いけません」。セツのそばで耳の孔をおしひろげながら、彼は「小泉八雲」となった。
凍てつく息を男の顔にふきかける「雪おんな」。耳をひきちぎられる琵琶弾きの盲僧「芳一[ほういち]」。変わり果てた故郷の姿に絶望する「浦島[うらしま]」。
小泉セツ、女たち、病者、獣、死者がざわめく声に、ハーンは耳の奥で、何かを聞いたのだ。
【目次】
【Ⅰ】ハーンの耳
序 文字の王国/大黒舞/ざわめく本妙寺/門づけ体験/ハーメルンの笛吹き/耳なし芳一 考
【Ⅱ】ハーンと女たち
語る女の系譜
「女の記憶」という名の図書館
【Ⅲ】ハーンと文字
文字所有者の優位から文字の優位ヘ:カフカ・ハーン・アルトー
盲者と文芸:ハーンからアルトーへ
【Ⅳ】宿命の女
「おしどり」とマゾヒズム
怪談 浦島太郎
【Ⅴ】ハーンと世紀末
ラフカディオ・ハーンの世紀末:黄禍論を越えて
ハーンを交えて議論してみたいこと
