ブルーノの問題
外国文学 2420円販売終了
作品説明
故郷喪失者は言語の中でのみ生きることができる
たとえどこにいようが故郷には決していないのだから
原書が刊行されてから二十数年が経過し、サラエヴォ包囲自体は過去の出来事になったかもしれないが、むろん優れた小説はこの程度の時間で古びるものではないし、そもそもユーゴスラヴィアの惨事と消滅そのものは過去の話であっても、同じような事態が日々世界で生じていることは言を俟(ま)たない。(柴田元幸)
ヘモンがナボコフとのあいだに感じる親近感は語彙という面からくるものではなく、故郷を喪失した作家が共通して抱える「埋め合わせてくれるものは言語だけ」という感覚だという。(秋草俊一郎)
A・ヘモンによる『島』は、彼が英語で書いたもっとも初期の作品のひとつである。ヘモン氏はボスニア人であり、一九九二年にアメリカを旅行中、ボスニアでの戦争により帰国の道を絶たれてアメリカに移住した。『島』 を書いたのは一九九五年の春、もはや母語で小説を書くこともできず英語でもまだ書けなかった三年間を耐えた末のことだった。
スチュアート・ダイベック(『プラウシェアーズ』 1998年春号)
【目次】
島
アルフォンス・カウダースの生涯と作品
ゾルゲ諜報団
アコーディオン
心地よい言葉のやりとり
コイン
ブラインド・ヨゼフ・プロネク&死せる魂たち
人生の模倣
訳者あとがき