都市の緑は誰のものか 人文学から再開発を問う
社会学 2500円販売終了
作品説明
都市のあちらこちらで再開発の計画が持ち上がり、少なからず反対の声があがっている。社会科学や自然科学の研究者は問題点を指摘するなど活発に発言しているが、人文学の研究者からの発言はあまり表に出ていない。都市は人間が生活する場であり、そこには暮らしの歴史や物語がある。そう考えると、歴史学や倫理学、美学など人文学の研究者も何か語ることができるのではないか。そのような思いから、2023年6月に、神宮外苑再開発問題をめぐるオンラインセミナーが開かれた。
本書ではそのときの登壇者にあらたな執筆者をくわえ、10章構成で、それぞれの専門分野から、都市の自然と人間との関わりについて論じた。関係的価値、グリーンインフラ、将来世代への責任などのキーワードを軸に、具体的な事例を参照しながら幅広いテーマを扱っている。都市に生きる私たちにとって、持続可能な都市とは何かを考える一助となるだろう。
【目次】
Ⅰ 神宮外苑再開発を問う
第1章 場所の記憶から照射するジェントリフィケーション
第2章 人と深いかかわりのある自然の保全の理念はどうあるべきか ――自然の関係的価値の視点からの神宮「外苑」問題
第3章 都市における自然の価値――「機能的価値」と「関係的価値」の視点から
Ⅱ 持続可能な都市をめざして
第4章 都市の生きた遺産としてのグリーンインフラ
第5章 ヨーロッパの持続可能な都市の輪郭
――気候変動への対応、スクラップ&ビルドしない再開発
第6章 すべての生き物のためにデザインされた共存共栄都市へ――マルチスピーシーズ都市とはなにか
第7章 将来世代にどのような都市を残すか――杜の都・仙台の実践
Ⅲ 美学と詩学から人と環境との関わりを考える
第8章 生活の時間と公園の時間
――都市における自然がもつ美的意義 青田麻未
第9章 場所や自然とどのような関係をもつべきか
――生態地域主義と環境詩学の視点から 高橋綾子
終章 より多くの人が都市を故郷と呼ぶ時代に向けて