その他 2020.03.11

劇作家・別役実さんの訃報を受けて

別役実さんが亡くなった。朝、新聞でその報を見て胸がつまった。ボイジャーは生前の別役実さんに電子本で戯曲を見るとこんな風になると説明した最初の、そして……最後の者だったのではないか。証拠のスナップをすかさず撮った。今日、そのスナップを探し回りここに掲げるようなことは慎みたい。

1960年代後半の早稲田大学で、演劇サークルの上演を知らせる立て看板は、マル戦とか革マルとか学生運動の立て看板が林立する中で人の目を惹きつけていた。そうした演劇サークルの中からやがて頭角を現す若手が輩出した。別役実、鈴木忠志とか……。だから彼らの名前も立て看板には目立った。「別役」って一体何て読むんだろう。俳優に別役がいるのか、余計なことまで思ったこともある。そんなご本人とずっと時を経て直接出会うことになった。

戯曲は本としてまるで売れない。売れないのは仕方ないとして、全国の学校の演劇部などで上演する際に、先生の所蔵本をコピーして台本としている。これは教育上よろしくない。とはいえ売ってなければ仕方ない。当事者となった日本劇作家協会がボイジャーに相談を持ちかけた。電子本で何とかならないか。

結論はこうなった。日本劇作家協会のWebサイトで無料で戯曲を読むことができる。この戯曲を上演したいとなれば、オンデマンドで何冊か台本がわりに購入していただく。販売の窓口はボイジャーが受けもつ。日本劇作家協会の会議にやってこられた別役実さんは、そこで電子本に遭遇したことになる。

日本劇作家協会の戯曲シリーズ、この表紙は和田誠さんのデザインだ。お願いに劇作家の斎藤憐さんと一緒に出向いたこともあった。和田誠さんも斎藤憐さんも既に故人となってしまった。そして今日また別役実さんの訃報となった。みんな逝ってしまう。たかが電子本されど、それなりの歴史が積み重なっていると心を慰めたい。

ありがとう別役実さん。

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