
葬儀の植民地社会史 帝国日本と台湾の〈近代〉
文化/民俗 4400円販売終了
作品説明
本書のテーマとして取り上げたのは、「植民地期の葬儀の変容」である。どの時代や地域においても葬儀は、その社会の価値体系が集約された儀礼であり、日常の暮らしのなかで人びとが重視し、その形式を維持継承しようとするものである。漢族の地方文化圏として、すでに一つの成熟期を迎えつつあった清末台湾漢族社会においても、それは伝統的価値体系を端的に示す事象だった。
しかし一八九五年から開始された日本の台湾統治は、まさに「近代」と表裏一体であり、「近代化」の名のもとに現地社会ではさまざまな伝統的価値観が否定されていった。その「植民地近代化」の過程で、葬儀という伝統的な儀式が、どのように変容したのか、あるいはしなかったのか。これらを歴史学の手法で分析・検証することは、支配者と被支配者の心情が複雑に絡み合う植民地社会の実相に、日常の視点から迫る手だてとなろう。(本文より抜粋)
【目次】
はじめに
序章
一章 伝統社会の葬儀と死体
第一節 伝統社会の葬儀
第二節 伝統社会と死体
二章 衛生と死体──統治期初期の死体と火葬をめぐる状況
第一節 植民地統治と死体
第二節 密葬と火葬
三章 植民地支配と葬儀──一九一〇~二〇年代を中心に
第一節 「旧慣」としての葬儀
第二節 郷紳層と葬儀
第三節 民族運動と葬儀
四章 台南墓地移転問題
第一節 都市と墓地
第二節 住民と墓地
小結──移転問題の結末
五章 皇民化政策と葬儀
第一節 戦時下の葬儀のゆくえ
第二節 改善葬儀の周辺
第三節 文学作品のなかの「葬儀改善」
六章 植民地の日本仏教──臨済宗妙心寺派の活動を中心に
第一節 台湾における臨済宗妙心寺派の活動
第二節 日本仏教と寺廟整理運動
第三節 日本仏教化する葬儀
終章
あとがき
主な参考文献・略年表・索引