REQUIEM WORLD TRADE CENTER
ニューエコノミーの象徴として生まれ、悲劇の最後をとげた世界貿易センタービル。巨大な二つのビルのあっけない崩壊は、ある意味でテロ以上に深いショックを与えた。本書では、古いビルを解体し、整地した跡にビルが建ち上がっていく成長過程と、当時この地区に住んでいた人々の表情や生活をオーバーラップ。ベトナム反戦運動、ヒッピー、訓練をする消防士、工事現場に立つ人、わびしげに散歩する老人など、そこにはあの時代特有のアメリカの姿と著者の青春があった。夢と熱と正義が信じられた時代。ビルが29年の生涯を閉じた今、本書は、我々が巨大なシンボルを喪失した大きな意味を問いかける。写真集の枠を越えた貴重な記録である。